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院生のフィールドレポート

トーゴ / ロメ 他

報告者:

グローバル・スタディーズ研究科 地域研究専攻 博士前期課程
中村 克己

調査地:
トーゴ共和国 ロメ、ソコデ
調査・研究課題名:
トーゴ共和国のリン酸肥料開発が農業・土地環境に及ぼす位置付けと課題 ― リン鉱石採掘・精製地及び周辺農村の現地調査 ―

1.調査概要

 農業がGDPの大部分を占めるトーゴでは、農産物(主食作物(キャッサバ、コメ等)、換金作物(綿花、カカオ等))の農業生産性が低いことを課題としている。この課題を克服するため、トーゴ政府は、国内で産出するリン鉱石による肥料生産を目指し、公営企業・Société Nouvelle Des Phosphates du Togo(以下SNPT)を2007年に設立した。トーゴ政府は、SNPTにより年間150万トンのリン鉱石を採掘・精製し、農業用に供給していると報じている[Kakpo 2023]。
 今回は予備調査として、リン鉱石採掘場・精製施設を視察し実際にどの様な規模で行われているか確認した。同時にリン鉱石採掘場・精製施設の周辺住民への影響確認を目指した。またトーゴ統計局・Institut National de la Statistique et des Etudes Economiques et Démographiques (以下INSEED)[INSEED]を訪問しリン鉱石関連統計データの入手を試みた。農村視察を行い、リン鉱石によるリン酸塩肥料が実際に農業生産性向上を図るように活用されているか実情を確認した。

クニンガウの司教座聖堂と周辺

2.調査対象地と調査スケジュール

2.1 調査対象地

(1)首都ロメ(LOME)近郊

 SNPTのリン鉱石採掘場所であるポガメ(KPOGAME)及びハホへ(HAHOHE)と精製施設が所在するペメ(KPEME)を視察した。統計局INSEED、経済・財務省(Minister of Economics&Trade)と近郊農村を訪問視察した。

(2)中部ソコデ近郊

 一つの農村コミュニティーを訪問視察。

図1:訪問地地図[出典LovelyPlanet]

2.2 調査スケジュール

調査は、次の1月31日~2月16日にかけて以下スケジュールにて実施した。
1月31日 成田発 2月1日 トーゴ・ロメ着
2月2日~10日 首都ロメ近郊視察:INDEED,SNPT(精製施設&採掘)
2月11日~13日 トーゴ中部ソコデ視察:農村地
2月15日 トーゴ・ロメ発 2月16日 成田着

3.調査内容

3.1 調査方法

今回の調査方法は、①現地視察、②可能なヒアリング及び③文献調査によった。

3.2 リン鉱石採掘・精製

(1)INSEED
 SNPTの視察の公式許可は現地に入っても得られなかった。VISA取得の招待者NAYAWUAME Armstrong氏(以下Armstrong)と視察に向けた事前協議を行った。日本での国連統計データの調査ではトーゴのリン鉱石の輸出入データが2020年以降ゼロであることを事前協議で伝えた。Armstrong氏は、直ぐにINSSED関係者を訪問する手配行ってくれた。
 Armstrong氏と共に、GUEMA Dyne氏(Director Management of Information of Statics)との面談を行った。今回の研究・訪問の目的と事前調査の統計データの結果を伝えたが、政府として難しい点なので話す事は出来ないと述べた。Dyne氏は、その上でINSEEDのWebにある統計データを確認するようにアドバイスをくれた。

(2)SNPT
 SNPT施設の見学は、Armstrong氏と在日トーゴ大使館員Jules Kankoe ADUYAYOM氏(以下Jules)の兄であるKangniv AHEGO氏(以下Kangnivi)のルートから元SNPTのGerald APETE氏(以下Apete)と接触が行えた。

(2―1)ペメ精製地域

①精製施設

 ロメ中心部から東へ30km強にあるペメにSNPTの精製施設は存在していた。
 SNPTの精製施設は広大で全てコンクリートの壁によって仕切られており許可なく中に入る事は出来ない。海岸に面するように施設が存在していた。SNPTに近づく途中で単線の貨物線路が確認できた。線路は住民の家の傍を通りながら精製施設の中に伸びている。実際に鉱石を積載した貨物列車が走っていた。更に施設から線路が海に向かって伸びて貨物が走れるようになっており、その先には船への積み込み桟橋があった。

図2:精製施設への貨物車
図3:SNPT精製施設
図4:積出桟橋

②精製施設周辺(廃棄物)

 精製施設壁の外には、精製後のリン鉱石廃土が野積みされていた。
 海上の積出桟橋に伸びている線路周辺の海は、明らかに他の海とは異なり黄茶色を呈していた。精製廃土の廃水が海に放出されている。

図5:SNPT周辺海水
図6:SNPT施設廃土

③精製施設住民環境

 精製施設の周囲には民家が点在していた。住民はヤシ、バナナ、キャッサバなどを栽培するか、漁業に従事している。住民がSNPTの精製施設で雇用され働くのは稀であるという。
 SNPT従業員は身元保証がはっきりしており、車でロメ方面から毎日通勤しており、 精製施設の幹部は外国人(フランス人、インド人等)であるという。

(2-2)ポガメとハホヘ採掘地域

①ポガメ

 SNPの採掘施設の一つが、ロメから30km強、ペメの北方に位置するポガメに存在する。
今回は、Apete氏の知人でポガメの採掘場で18歳から現在(多分50歳後半)まで勤務している現場監督者A氏(名前公表不可)の特別な計らいで案内が実現した。見渡す限りの露天掘り採掘場であり、巨大な採掘重機と鉱石を運搬する大型トラックが走行していた。ベルトコンベアーが配置されており、鉱石を貨物の積み込み場所まで運んでいる。
 採掘現場は地上から35mの深さに達しており、埋蔵範囲は広大でロメ周辺までに及んでいると説明があった。採掘地が拡大につれて、隣接する農民は政府により強制的に別の場所に農地と共に移住させられていた。
 A氏から、従業員数は432人、勤務体制は24時間3交代制勤務であると説明を受ける。ペメ同様に、従業員は周辺住民ではなく、ロメなど他の場所から自動車やオートバイで通って来ている。

図7:SNPT採掘場
図8:鉱石積み込み場
図9:貨物車

 貨物一両が25tの積載を示している。50両以上の貨物が連なっている事が確認できたが、正確な数は把握できなかった。 

②ハホヘ

 ハホヘはポガメの近くで主力リン鉱石採掘地である。ハホヘにはSNPのリン鉱石採掘の管理本部があり、その幹部が居住する施設があった。幹部はフランス人、インド人等である。採掘地への立ち入りは厳しく規制されていた。

(3)LARE Damitose氏との面談

 SNPT施設見学と並行し経済産業省のLARE Damitose氏(Inspector of Trade, Minister of Economics & Finance, 以下Lare)と面談できた。Lare氏は貿易に関連する財務を管理している。Lare氏よりトーゴの(SNPTの)リン鉱石の輸出に関する情報提供があった。
 2022年の輸出相手国はインド、ブルガリア、オーストラリア、ニュージーランドであり、その売上高は1570億FCFAである。

3.3 農村地

 リン酸肥料を使用した化学的農法が行われているか[Kansoun 2020]、非アグラリアン農業[杉村・鶴田・末原 2023: 12]として焼畑などによる慣行農法[末原 2012: 203]なのかを確認を試みた。
 ロメ近郊の農業地域やペメ、ポガメ訪問の途中の農村地域及び中北部の農村地ソコデ(SOKODE)を訪問した。

(1)ロメ市内及び周辺

 ロメ市内及び周辺地域では、個人農家が小規模な農産物栽培を行っていた。主たる作物は葉物(レタス類)、ヤム、キャッサバなどである。化学肥料を使用している形跡はなく、焼いた腐葉土のような物が積み上げてあり肥料だと言う。

図10:ロメ市内農地
図11:農地の腐葉土

(2)ロメ郊外

 ペメ、ポガメに向かう途中ではキャッサバ、ヤシが栽培され、それぞれの作物は混じり合って栽培されていた。リン酸肥料等の化学肥料を使用している形成は無かった。
 ソコデに向う途中では、焼畑を行って黒く燃えた跡を確認する事ができた。

(3)ソコデ周辺

 ソコデ周辺で栽培されているのは、チーク、キャッサバ、ヤシ等である。また、ヤムやトウモロコシも栽培されている。
 チークの木の下は黒く焼け焦げており、乾季を利用して収穫後のヤムやトウモロコシの茎葉と下草を火入れしていた。リン酸肥料の保管や肥料散布を目撃する事は出来なかった。

図12:ソコデ周辺

3.4 Alfred HEAGOからのヒアリング

 以下は、Jules氏の長兄であるAlfred HEGO氏(以下Alfred)のコメントである。
「リン鉱石は重要なトーゴの重要な鉱物資源である。トーゴ独自に開発を行っておらず、フランスとドイツの影響が非常に強く働いている。SNPTが国営企業であっても、フランスの企業であるから上層部にはフランス政府の意向が働いている。トーゴ政府びフランス政府との間の癒着構造がある。また農民が強制移住させられる事も事実である。
 農民は慣習農法を好みリン酸塩肥料の使用を実施しないのではなく、農業生産性を上げる肥料を使用したいが、リン酸肥料が高くて購入するのが困難である。
 海外企業へリン鉱石が流れ、海外で肥料として生産され逆輸入に至っている。このサプライチェーンが公正になされているとは言えない。その為、肥料として輸入された時には非常に高価になってしまっている。(聞き取り日:2025年2月5、6日)。 

4.今回調査で分かった事と今後

4.1 リン鉱石開発に関連して分かった事

(1)SNPT

①稼働状況

 SNPTがリン鉱石を採掘し精製している事を確認できた。

②輸出

 リン鉱石精製物が、専用の桟橋から船積みされ輸出されている。

(2)地域環境

①地域住民

 ポガメの農民は採掘場所の拡大に伴い強制移住を強いられている。

②廃棄物

 ペメ施設の外には無造作に廃土が野積みされまた、施設傍の海岸は黄茶に変色していた。

4.2 農業関連で分かった事

(1)栽培状況

 焼畑農法が行われている。化学肥料は高価で入手し難いという。

(2)農家の強制移住

 採掘範囲の拡大に伴って、農家は農地と共に移住していた。

4.3 今後の研究調査

今後の研究調査のポイントとして挙げる。
(1)SNPT拠点周辺住民(農民・漁民)へのヒアリング
(2)貿易・財務に関わっているLare氏への再接触
(3)INSEED Webデータの再解析
(4)アカデミアへの接触

参考文献