プロフィール
人類学を専門分野として、ムスリムの研究をしています。博士課程の学生だった1988年から1991年までエジプトに暮らし、アレクサンドリアから西に広がる地中海沿いの地域で、遊牧を伝統的ななりわいとしてきた人々を調査し、フィールドワーカーとしての経歴を歩み始めました。グローバル化の波を受けて定住し、変わっていく彼らベドウィンの暮らしの様々な側面—部族、住まい、歌謡、信仰、儀礼など—をこれまで取り上げてきました。
その後、普通の人々にとってムスリムとして生きることがどんなことなのかを問い続け、民衆のイスラーム、とくにスーフィズムと聖者崇敬に注目した学際的な共同研究を20年近く続け、他の中東諸国や中央アジア、東南アジア、米国でも短期の調査を行いました。イスラーム主義の興隆と変容のなかで、見失われがちな現代イスラームの多様な形に目を向けるように努めてきたつもりです。最近では、「アラブの春」によってなかば無政府状態に陥ったリビヤの影響を受けて、極端に治安の悪化した最初の調査地の状況を見聞きして、暴力や紛争の問題もこれまで以上に意識するようになってきました。
担当の演習では、学生は人類学的な手法による研究を行う者である必要はありません。しかし、人類学的な視点、つまり、あくまで具象にこだわりながら、どこまでそれを敷衍することができるかを常に考えることは重視しています。この視点を活かして、中東を中心に多様な地域的分野的関心を持つ学生が、専門家としての技能と感性を高めていくことが目標です。演習は、問題と解答を発見する直感を養い、それを論理的に口頭と文章で表現する技量を磨く共同作業です。あわせて、自分以外の学生の関心をきちんと受け止め、それを手助けして、共同研究を行うことのできる力を伸ばすことも大事にしています。