プロフィール
学部時代に文化人類学とマレー・インドネシア語を学び、マレーシアに一年間留学して以来、現在までに合計10年ほど住み、マレーシアを中心とする東南アジア・ムスリム社会に関する研究を続けてきました。研究の主なテーマは、近代化に伴うムスリム社会の変容を通じて教育や知識の生産・流通の不均衡という現代世界の問題を考えるというものです。ムスリムがイスラームを学ぶ、という事象はイスラームが伝来してから脈々と続いてきましたが、近代的学校教育制度が導入されるとその姿は大きく変化しました。圧倒的な力をもってマラヤを支配したイギリスの統治下で広まった近代的学校を見て、ムスリムもイスラームを同じような形で教えることがムスリムの発展に役立つと考えるようになりました。教室を作り、学年制を作り、試験をして…そうするうちに、「イスラームを学ぶこと」は、信仰のために学ぶ、ということから、試験でよい成績を取って、よい学校へ行くことと結びつくようになり、やがてイスラームの学問は、より良い職業につながる学問よりも低い地位に置かれることになりました。このような何がより価値のある知識か、どこがより「良い」大学か、という価値観は、今や世界を一つの価値体系の中に包み込んでいるように見えます。この中で、様々な宗教、文化の持つ異なる価値観はどこへ行ってしまうのでしょうか。異なる文化、特に強い力を持つ人々の文化とそうでない人々の文化や価値観が出会うところでは、どのような相互作用が起こりうるのでしょうか。大学院の講義では、イスラーム、仏教、キリスト教、中国系宗教やその他の宗教が様々な形で共存している東南アジアから、各国の社会における宗教の位置づけ、宗教的多数派と少数派の関係、世俗的な教育と宗教的教育、といった様々なトピックを履修者の関心に合わせて議論しています。